第9章 友情と愛情
生徒会室に入って、生徒会長の机に腰掛けると、間も無く扉があいた。
「お前、こんなとこで何やってんだ?」
「若!」
「け…跡部部長に言われて」
「部外者立ち入り禁止だけどな……あの人に職権乱用って言葉は無意味だな」
若がため息を吐く。
「お前、眼鏡は?」
「さっき、ちょたに取られた」
「鳳が?何やってんだよ」
「猫がいて、遊んでた」
「ふぅん」
若の髪がサラリと揺れて、手に持った書類を私が腰かけている机に置いた。
若には、景吾とは異なる美しさがある。
綺麗な目。
眺めていると若が私を睨んだ。眉間にグッとシワが寄る。
「わか…」
言うが早いか抱き締められてしまった。今日はなんなんだ…。
「お前なぁ、どんだけ心配したと思ってるんだよ」
「…ごめんね」
背中に手を回しとんとんと叩くと身体が少し離れた。
「んぅっ」
長太郎とは違う、少し乱暴なキスが落ちてくる。しかも1度じゃない。まって、まってまって。
「わっわ…かしっ、まっ、だめっ」
なんとか言うと動きが止まった。
顔を見ると、眉尻が下がってなんとも情けない表情になっていた。
「ごめんね」
そう言って前髪に触れ、若の額にキスを一つ落とした。
「ありがとう」
眼鏡がないから上手く笑えないけど、心配してくれてありがとう。
若が悔しそうな顔で私を見た。
「あの人は……跡部さんは、お前をちゃんと守ってくれるだろうな」
「うん」
突然景吾を褒められ頬が緩むのを感じた。
若がスッと緊張したような顔になる。あれ、私いま少し笑ってる?
「本当にあの人が好きなんだな」
苦しそうに顔を歪める若を危うく抱きしめそうになる。