第1章 先輩と私
「跡部先輩が茶々入れてきたんでしょ!買い出し行きますから、リストください」
「ああ、もうそんな時間か」
ソファに腰掛ける跡部先輩を見ると、膝の上でジロー先輩が寝ていた。
「ほら、ジロー先輩、そろそろ起きてください」
ジロー先輩を揺さぶると、ふわりと頭を撫でられた。
もう、部室なのに。
向日先輩は着替えていて気付いていないから良いけど、そんな風に優しく触れていたら、すぐにバレちゃうよ、先輩。
「ジロー先輩〜おーきーてー!」さらにゆさゆさと振るうと「ん〜〜っ」と伸びをしてジロー先輩が体を起こした。
「樺地、ジローを運んでやれ」
パチンと指を鳴らすと樺地くんが後ろに立っていた。
「樺地くん、お疲れさま」
「ウス」
「今日は俺も買い出しに行く」
「えっ!?」
「生徒会で使っていたコピー用紙を、水たまりに落としたバカがいてな。明日届くんだが、部活で配る分に足りねーからついでに買いたい」
「あ、それくらいなら私が買ってきますけど」
「お前は生徒会じゃねーだろ」
「まぁ、そうですけど」
「じゃあ、向日、メニューはだいたい忍足に渡してあるから、練習始めといてくれ」
「おう、分かった」
「あ、向日先輩、これ、長太郎のメニュー、ここだけ変えておいてください。朝軽く捻ったみたいで、少しだけ負担減らしてあります」
メモを渡すと向日先輩は指先でつまんだ。
「お、さんきゅーな、侑士にも言っておくぜ」
「よろしくお願いします」
向日先輩が部室を出ると、後ろから抱き締められた。
「…景吾、部活中はそういう事しないって、景吾が言ったんだからね」
「うるせぇ、お前が他の男と仲良くお喋りしてるのが悪いんだろーが」
腕の中で景吾に向き直る。
背伸びをしてキスをすると、景吾が赤い顔をしていた。
「ほら、もう買い出し行くよ。」
「ああ」
ドアへ向かうと景吾はガチャリと鍵を閉めた。
「ちょっと、何してんっ」
キスで唇を塞がれ言葉に詰まる。
喰むようなキスを繰り返し、息が上がる。
「け…ご、部室だって…ば…んんっ」
唇をねぶるように舌が入り込む。
景吾のジャージにしがみつくと、より深く舌が進入してくる。
「ふ…あ…」
顔に添えられた手が下がってきて、首筋を撫でられる。
ぴくりと身体が反応してしまう。