第4章 どこにも行かないで
俺様を見つけた、と、一生懸命説明する姿を見て、思わず頬が緩む。
勝気な態度も、俺様に向かって私の男だと言うところも、呼吸を忘れるほど好きだ。
『跡部様の物にしてください。』
『どうか私を見て。』
『私を選んでください』
ただ待つだけの女に用はない。
不遜なことを言い出す野薔薇を見ると、不思議なことに胸が躍る。
好きだと言った時、野薔薇は訝しげな顔をして、一目惚れだと言ったら「顔ですか?」と真顔で言った。
顔には確かに驚いたが、背負い投げをした姿に釘付けだった。髪を切り落として、不遜に笑ったところ。
顔はその後だ。眼鏡を外して「美人なら、いいんですね?」だ。
その態度、最高じゃねーの。
地味だが頑張り屋で、仕事の出来るマネージャーとしか思っていなかった。
それなのにコイツは、俺様の心に居座った。
冷たい瞳で俺を見つめる、氷の女王様。