第3章 過去
マネージャー1人に2人か3人の1年生が手伝いとしてついて、仕事を学ぶそうだ。
後々知ったことだが、毎年部員目当てのマネージャーがあまりにも多いため、マネージャーは面接を挟むことになったらしい。
1日ごとに1人また1人とマネージャー志望は減っていく。
2週間経って残ったのは8人。
40人近くいたのに8人…。
マネージャーとして部活が始まってから、毎日とても楽しくて、夢中で仕事を覚えた。
家に帰ったところで、お父様が出迎えてくれることはなく、たまたまあの女の人と出くわすと露骨に嫌な顔をされるので、家にいる時は、部屋からほとんど出なかった。
1か月経ったところで正式にマネージャーとして認められることになり、部長に挨拶をしに行った。
キャプテンについてアヒルの子の様にぞろぞろと部長の前に出たところで、2人の女子が「「跡部様ぁ!!」」と叫び退場となり、今年のマネージャーは6人になってしまった。
生徒会長はその綺麗な顔で「はぁ」とひとつ溜息をついた。
憂いた瞳に伏せた長いまつ毛が綺麗。
「御苦労、部長の跡部だ。お前らは今日から正式なマネージャーだ。部員も多く大変だと思うがよろしく頼む。以上だ」
「よろしくお願いします」
6人で頭を下げ、コートの端に戻ると、キャプテンと目が合う。
この1か月で1番柔らかい表情をしたキャプテンを見て、新入生のマネージャー教育の大変さを感じた。
キャプテンにも改めて頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、頼りにしてる」
ぽん、と頭を撫でられ顔を上げると、今度はキャプテンの視線は跡部部長に注がれていた。
少し切なげに見えて、もしかしてキャプテンは跡部部長と付き合っているんだろうかと思ってしまった。
部長がこちらへ来る。邪魔してはいけないと下がると部長がキャプテンに話かけた。
「灰崎、1年生のデータはどうだ。」
「12番に取らせてるわ。少し待って」
ケータイを手に取るキャプテン。
「もしもし?灰崎だけど、うん、そう、すぐ持ってこれる?はい、ありがとう」
「部長、2分後にはデータでPCに」
「ああ、分かった」
「あの、…先輩達は、お付き合いされてるんですか?」
我ながら唐突だったと思う。