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【イケメン戦国】 短編集

第2章 眩しすぎるもの



…少しやりすぎたか


どうやら、つい褒美のような甘く温かいものを求めて意地悪をしすぎてしまったようだ。



我ながら、直したいとは思うのだが…
こういう性分なのでな、手の施しようがないのが現実だ。



俺は杏を見つめる。
すると、もっと近くで杏の顔がみたいという欲求に駆られ、俺はしゃがみ込んだ。




目元を緩ませながら、先ほどより近くにある杏の顔を見つめる。




心が温かくなり、思わずくすっと笑ってしまった。




すると意外と近くから聞こえた俺の笑い声に気付いた杏はゆっくりと伏せていた顔を上げる





同じ高さで目が合った





次の瞬間





まるで『近くで意地悪される』と言わんばかりに杏は身構えた後、目を瞑った。





まったく、心外だな。
…まあ、今回ばかりは仕方がないがな。


にしても男が目の前にいるのに目を瞑るとは…
誘っているも同然だが、杏は気付いていないのだろうな。



俺の前だから許されるが…
やれやれ、無防備にもほどがあるぞ。




杏の無防備さになぜか怒りに似た感情を抱く。
がその感情とは裏腹に杏から与えられる褒美に俺の頬は段々ほころんでいく。





そうこうしていると、杏が恐る恐る目を開けた




おそらく何もされないことに疑問に思ったのだろう。




俺と目が合った瞬間、杏は目を見開き
段々顔が赤くなっていった。




しばらく目を離せないでいると




始めは初心な顔をしていた杏の顔が





次第に『女の顔』へと変わった――――






俺はバカではない。



杏のこの顔が何を意図しているか手に取るようにわかる。



そして、当の本人は無意識でやっていることもな。





そうだ。





気付かなくていい――――






…もちろん意図することを杏に気付かせることは簡単だ。




しかし




闇を歩く俺にそれをする権利はないし、する気もない。






俺には…お前は眩しすぎる。






俺は無意識に苦笑を漏らした後、





「…そんな顔をするな」





低く艶を帯びた声で呟いた。





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