第5章 M×A for MJbirthday
夕方。
「じゃあそろそろ、帰るね。」
「そうね、…いつでもここに来なさい。」
「うん…ありがとう…」
「あと、明日は学校休みだろ?ちょっと話したいことがあるから、ここで待ってるよ。」
「わかった。じゃあお昼頃くるね。」
次の日。
また、ばぁちゃんちに行ったらばぁちゃんがご飯を作ってくれた。
普段は家で、親はほとんどご飯作らないし、家に材料もないし、
…俺にはお金、渡してくれてないし。
だから、食べないこともよくあった。
ばぁちゃんのご飯は、すごい美味しくて。
すっごく、
あったかかったんだ。
食事を終えて一息ついてたら、
「雅紀…あんた、高校は別のところ、行きなさい」
「へ?」
「もう…こんな田舎には居たらダメ…」
「ばぁちゃん…」
「家出て、一人暮らししなさい」
「…」
「このまま、あの家に居ても…」
「言わないで。…今は、まだ」
「雅紀…」
ちょっと、
考えさせて。
そう言って逃げるように出てきたばぁちゃんち。
考えるはずが、何も考えたくなくて。
だって、こんなことのない未来なんて、
俺が想像したら…
想像したら、すべて消えてしまいそうだから…
夕焼け空が広がっていた。
何をするのが正解で。
何をするのが間違いか、なんて。
わからないんだ。
人に優しくされる方法がわからない。
ねぇ、
俺はばぁちゃんに頼ってもいいの…?
1か月後、
季節は、もう秋になっていた。
「ばぁちゃん?」
「おお、雅紀。よく来たねぇ。」
またご飯を作ってくれたばぁちゃんは、俺が食べるのをニコニコと見つめてくれた。
「ねぇ、ばぁちゃん。」
「ん?」
「俺…家、出てもいいの?」
「もちろんだよ、わたしが、出せる分だけは出すから…」
「ありがとう…」
あの日も、俺は泣いた。