第5章 M×A for MJbirthday
the old story
どうしても、ここを出たいと思った。
ここに居たら、
壊れてしまう。
学校でも、心が休まらない。
なぜなら、みんな俺が家でどういうことをされているか、
知っているから。
だから、誰も仲良くしてくれない。
いつから、なんて覚えてない。
田舎に住んではいるんだけど、
家は、それなりにお金がある家だった。
親父もおふくろも一人息子の俺に、過剰な期待ををした。
小さい頃から習い事をたくさんして。
学習塾に通って。
ほとんど誰もしない中学受験をして。
でも、県内で一番の学校には落ちてしまって。
2番目の学校に通った。
思えば、その時にはもう、
始まっていた気がする。
受験に落ちたこと。
学校の成績。
普段の生活態度。
俺がすることには、だいたい文句がつけられて、
そのたびに怒られていた。
そして、それに比例して増える、痕跡。
暴言。
どうやって受け止めたらいいか、わからなかった。
高校に入ってもそれは続くのかと思うと、
怖くて仕方なかった。
ある日、
その時も、朝まで両親に殴られた後だった。
道を歩いていた。
「…マサキかい?」
俺を呼ぶ、女の人の声がした。
「…え?」
「マサキだよねぇ…こんなに大きくなって…
でも、どうしたんだい、この傷。」
「え、あの…」
「私は、お前のおばあちゃんだよ。
昔を最後に、うちには来なくなっただろ?」
え…
そこで会ったのは、幼い頃の楽しい記憶に眠る、
懐かしい祖母だった。
「ばあちゃん…」
「マサキ…平気かい…?
とにかく、うちに来なさい。」
「え、でも学校…」
「いいから。うちに来なさい。」
半ば無理やり連れてこられた、久しぶりの、ばぁちゃんち。
いつからか、親たちとばぁちゃんたちの関係が悪くなって、
ずっとご無沙汰してた。
「お邪魔します…」
「はい、入って〜。なんかご飯、作るけど、…
あ、マサキはチャーハンが好きだったわね?」
家に入っても、ばぁちゃんは何も聞いてこなくて。
その日はいちにち、ばぁちゃんちに居た。