第5章 M×A for MJbirthday
A side
眠るのは好きじゃないし、病院はもっと好きじゃない。
だけど動けないし、それ以前に目を開けることすら出来ないんだから、また深い闇へと墜ちていく。
暗い記憶に引っ張られて、もうダメだって思う時、そこでいつも声がする。
「相葉…。好きだ。」
「もうそろそろ起きろよな…。」
「遅刻の範囲を超えてるぞ、コイツは…。」
色んな、だけど同じ人の声が聞こえてきて、真っ白い光に包まれて俺は助かるんだ。
…松本先生の声。
今もそうだ。
また闇が見える。
母親も、父親もみんな俺を引きずり落とそうとしてる。
親族もみんなみんな…。
引きずり込まれそうになって、もうどうしようもないと思った。
手が伸びてきた。
真っ白い光の中から、綺麗な手が伸びてきた。
「こっちに来い」って声とともに。
その手をがむしゃらに掴んだ。ぎゅっと、固く。
その手に引き上げられてく。白い世界へと誘われてく。
「んん…。」
目を開けることが出来た。
久しぶりの眩しい光は、目を刺すような刺激だ。
真っ白い天井が見える。
手には暖かい感触。
その先を辿れば、ベッドサイドの椅子に座って、俺の手をぎゅっと握ってベッドに頭を乗せて寝てる人が見える。
…もうつむじだけで、誰だか分かるようになっちゃったんですよ、俺…。
ねぇ、先生。
自惚れてもいいですか。
言ってもいいですか。
「好き、です…。」