第1章 S×N
N side
それから、俺たちは
恋人ってヤツになった。
…っていっても、
特に変わったことなんてないけど。
強いていえば、翔のいる左隣が前よりも
ずっと暖かくなったってこと。
一緒にいるだけで、幸せー♡
なんてさ、中学生じゃないんだからさ。
2人で一緒にいたら、びっくりするくらい
『和也、大好きだよ。』オーラが
漏れてるんだもん。
なのに、触れてきてくれない。
キスも、あの日からしてくれてない。
楽屋では、いつも俺の隣に陣取ってる。
翔に触れてるところ全部が熱くなっていく。
けど…『抱かれたい。』なんて
「言えないよ…。」
「何が言えないの?」
「ひゃぁっ!」
「何、その反応。」
完全に忘れてた。相葉さんの存在。
「何か悩み事?」
ニコニコした顔で
俺に聞いてくる。
コイツのこういうところ、
正直いつも救われる。
代償を求めてないような真っ直ぐな優しさ。
「あ、もしかして。
翔ちゃんと、ヤったの?」
前言撤回。
「ばかっ!!
逆だよ!逆!!
俺がどんだけ我慢してると思ってんだよ!
こんの、あいばか!」
口を開けて、ぽかんってなってるし。
「えっと…。
ごめん?」
「うん。俺もごめん。
どうしよ…。はぁ。」
深ーーいため息が、
2人には広い楽屋に広がってく。
「言っちゃえば?」
「言えたら苦労してない。」
「じゃあ、行っちゃえば?」
「へ?」
「寝込み、襲っちゃえば
大丈夫だって。」
超ドヤ顔だし。
「うーん。」
「大丈夫。
あ。」
そう言って、カバンをガサゴソ
漁ってる相葉さん。
「シラフが辛いなら…。」
「??」
渡されたのは、ちっちゃな瓶に入ってる液体。
「これって…。」
「グッドラック。」
「え、いやいや。」
止める間もなく、お疲れーって帰ってったし。
「ってか、これどーすりゃ
いいのー?」
小瓶を傾けて、液体を揺らす。
とにかく、使ってみるしかないのかもしれない。
「…よし。」
決戦の夜。