第1章 S×N
N side
目の前にいる人は、
もしかしたら嵐の中で1番
鈍感なのかもしれない。
「ねぇ、翔さん。」
「んー?」
楽屋で黙々と新聞を読んでる翔さん。
その膝の上に頭を置いて、
ゲームをしてる俺。
「暇?」
「見てわかんない?」
素っ気ない返事。
そりゃー、俺だって
見れば分かるよ。
ぼニュース番組に備えて、
毎日新聞を読み込んでる事くらいは
よーーく知ってる。
どれだけ、翔さんのこと
見てると思ってるの。
分かってて聞いてるんだよ。
何で気付かないかなぁ。
「ねぇ、翔さん。」
「何?」
明らかに機嫌の悪そうな声。
俺だって機嫌、悪くなりそうだよ。
どんだけアタックしてると思ってるの。
結構攻めてるほうだよ?
これさ。
いつも絡んでくる相葉さんにも、
やたら距離の近い大野さんにも、
絶対にこんな事しないのに。
「今の俺の場所、変だと思わないの?」
「変って何で?」
「何でって…。」
傍から見ればおかしい。
いい年した大人が、こんな事してるんだよ?
もう30超えてるんだよ?
20代ならまだしも…さ。
「だって、ニノがそこにいたら
落ち着くから。」
「ばっ…。」
この人は、本当にずるい。
分かってないんだもん、本当に何も。
「ニノ、顔赤くね?」
「…っ。」
誰のせいだと思ってるの。
言いたい言葉は言えない。
喉まで出かかってるのに。
「ニノー?」
新聞を読むのを止めて、
俺の顔を覗き込んでくる。
下から見上げる翔さんは、
何だか魅力的で。
ぷっくりとした、その色っぽい唇に
吸い寄せられるようにキスをした。
「え…。」
状況が読み込めてないのか、
目を何度もぱちぱちしてる。
そういう反応が
可愛いんだよ。
この人は、絶対に嵐の中で1番鈍感だ。
でも、そんなところも好きな俺は
重症なんだろうな。
だけど…
「好きだよ、ばぁぁか。」
これくらい言わなきゃ気が済まない。
これから覚悟してよね?
俺の想いは、半端じゃーないんだから。