第6章 ふたりの記念日 A×N
時計は、23時30分を指そうとしていた。
まだ、連絡もこない。
…仕方ない、かぁ。
別に相葉さんのせいではないから…。
でもやっぱり、
って、もうどうにもならない感情を
抱く自分が嫌で…。
頭を冷やそうと窓を開ける。
ヒヤッと入ってくる冷気。
その時、下から小さな声が聞こえた。
「かーず。」
姿を見なくてもたった二文字だけで、
誰だか解る。
「相葉さん…。」
下から相葉さんが、おいでおいでをしてる。
用意していた小さなバックを引っ付かんで
家の階段を駆け降りた。
「遅くなってごめん。」
そうやって、耳元で響くあなたの優しい声。
2分前には恋しかった、
温もりに包まれている。
「ううん、いいよ。」
「じゃ、行こっか。」
相葉さんが、俺の車を運転してくれる。
助手席に座って、慣れた手付きで
車を発進させる相葉さんの手を眺める。
「ねぇ」
「うん?」
「これ新車だから事故んなよ」
「新車じゃなくても俺ら事故ったら
マズいでしょ?」
「じゃなくて、俺のベンツ!」
「俺、かずより運転上手いから大丈夫。」
ふふって笑う、あなたが愛おしい。
「むー…。」
「拗ねないの。
だから、かずの事は俺が守るから。」
いつからだろう。
あなたとはずっと、
隣に居たいと願うようになったのは。
男同士だし、アイドルだし、
…障害がたくさんあるのは分かってる。
でも、
いつか未来に、
俺らなりの、赤い絨毯があって…。
「かず、どうしたの?」
「なんでもない。」
素直じゃないなぁ…、っていう、あなたの声。