第11章 陸と歌と掃除*
『ん?ここは?』
気づけば私は真っ白なベットの上で寝かされていた。
どうやら場所はアイナナ寮の空き部屋のようだ。
「あっ!フウ、目が覚めた!体調大丈夫??いきなり花壇の前倒れちゃったからびっくりしたよ!」
起きてすぐに目に入ったのは赤髪で、どうやらさっき支えられた感覚があったのは陸くんらしく、私をここまで運んでくれたようだ。
『ありがとう。陸くんのおかげで頭ぶつけずに済んだわ!』
「どういたしまして!あっ、お医者さんは軽い熱中症だって言ってたけど何か飲む??」
『うーん。そしたら、お水でいいからくれる?』
「わかった!ちょっと、待ってね。」
陸くんはすぐに立ち上がり冷蔵庫からミネラルウォーターを出し、渡してくれた。私は水を飲み一息し、少し寝たおかげでさっきより大分体調も良い。ずっとここにいる訳にも行かないのでベットから立ち上がろうとした時、自分が寝ていた枕が濡れている事に気づく。
鏡で自分の顔見てみると、確かに泣いた後があった。
そして誰かが涙を吹いた後も。
私はふと、夢の出来事を思い出した。
今ここにいるのは陸くんと私しかいない。
陸くんの方を見てみると窓を眺めながら歌を口ずさんでいた。
~♪
この歌は……
うん。知っている。
あぁ。やっぱり君が助けてくれたんだね。
『ありがとう。』
君に聞こえるか、聞こえないかの声音で私はお礼をいった。
今は、君の歌を邪魔したくなかったから。