第11章 陸と歌と掃除*
今日は朝から調子が悪く、一向に掃除が進まない。
もしや女子日近い??
それとも暑さのせいかね……。
私はとりあえず、日陰の花壇のところに腰を下ろし、休憩するのだが、体調が悪化するばかり。
『これもしかして…やばい…かも。』
私は早退させてもらおうと立ち上がるも、立ってる感覚さえなく、その場に崩れて落ちてしまう。
だが、衝撃はなく誰かが支えてくれたのがわかった。
ただ今の私に目を開ける力はなく意識を手放した。
目の前広がる景色はモノクロで、横断歩道の前。
これは私の奥にしまっていたもの。見たくもない過去。
夢だとわかっていても目を閉じることも、耳をふさぐ事もできやしない。
あぁ。
今日はなんて嫌な一日だろう。
信号が青に替わると同時に男は走り出す。
少女は両手を広げ貴方を待つ。
【見たくない。】
大型トラックと急なブレーキ音。
少女の目の前が真っ赤に染まった。
【見たくない。】
綺麗に包装されていた猫のぬいぐるみはボロボロ。
持っていた小さな花束は少女の上で舞っていた。
【見たくない。】
男は動かない。
【見たくない。】
少女は大声で泣き叫ぶ。
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!。』
特別な日や、誕生日でもクリスマスでもない。
ただの日常。
そして今日はその日常が壊れただけで。
ただ私の父が死んだだけ。
何度も何度も同じ景色が繰り返される。
この悪夢はいつ終わるのか。
目を閉じても浮かぶ光景。
耳をふさいでも聞こえる音。
私はいつぶりかわからない涙が流れた。
~♪
『えっ。』
~♪
『歌が聞こえる?』
~♪
『とても優しい歌……。』
~♪
『誰……?』
私は歌が聞こえる光の方に歩き出した。