第8章 陸と掃除*
そしていざ、陸とやらのもとへ。
『たのもー!!』
「えっ!?神崎さん!なんで!?」
よかったよかった部屋間違えてなかった。
『君にこれを渡そうと思って。ユリ根のスープじゃ、レッスンが終わったら食べておくれ。きっと不味くはないと思う。』
「えっいいの!?…っじゃなかった、いいんですか?俺、ユリ根のスープ好きなんです!!」
『あーぁ。別に無理に敬語話さなくてもいいよ。多分歳近いし。』
「えっ!?神崎さんっておばさんじゃないの!」
おい、待て赤いのぶっ殺すぞ。
『……これでもか。』
私は咄嗟に自分のマスクと三角巾を外した。
「…!!」
『ね、同じくらいでしょ?』
「ごめん💦普通におばちゃんかと思ってた。」
『分かればよろしい!』
それじゃ!っと私が部屋を出ようとした時だった。
「げほっげほっ」
『ちょっ、おい!?大丈夫?』
「ごめっ……げほっ。ちょっとびっくりして……もう少ししたら……ごほっ落ち着くから。」
どうやら、私が若いことにかなりびっくりしてしまったらしい。
「情けないよね。こんな事でびっくりして発作起こすとか。……俺は頑張らなきゃいけないのに。」
……頑張るか。
『……ねぇ、陸くん。頑張る事はとっても素敵な事だと思う。だけど、無理をするのと頑張るではまったく意味が違うんだよ。』
「え。」
私はマヌケ面した陸くんの頭にチョップをかました。
「痛ぇ!」
『もう少し力抜いたらどうだい。発作を起こして何が悪いんだぃ?発作が起きたらアイドルはできないとでも思ってる?それは違うね。アイドルは笑顔と夢を売る仕事でしょ。だから笑顔じゃない人がアイドルになれるわけないんだよ。今の君はどうかな?』
鏡もってこよかと、冗談を言えば首を振って大丈夫と笑顔で答えた陸くん。うむ。さっきの様な無邪気な笑顔。
もう発作は治まってるようだ。軽いものでよかった。
「やっぱり神崎さんはすごいね。」
『清掃のおばちゃんが?冗談でしょ?私は普通の事を言っただけだよ。ほら、咳が落ち着いたなら練習に戻りな。』
「うん!俺頑張るよ。神崎さんユリ根のスープありがとう!あっ、神崎さんの下の名前は?」
『えっ?だけど?』
「そっか!、本当にありがとう!」
『!……////』
こりゃまいった……今の笑顔は満点だわ。