第2章 泳ぐのは『好き』ですか?
西島楓は2年前、14歳にして世界を制した
天才スイマーだった。
が、新記録を叩き出したその大会を最後に
突然引退を表明し、
そして、
突然姿を消した。
兄が失踪したという事を受け入れる事が出来なかった母は、双子の妹であるそっくりな私を兄の代わりにした。
この2年間、
私は西島紅葉ではなく
西島楓として生きてきた。
そうでないと、
母はおかしくなってしまうから。
でも、それは別に苦痛なことではなかった。
むしろ、苦痛とは思ってはいけなかったのかもしれない。
兄を失踪させてしまった原因は
少なからず私にもあるはずだから…。