第2章 泳ぐのは『好き』ですか?
今日から通う事になる
岩鳶高校の門をくぐり、職員室へ向かう。
職員室へ挨拶をすませると、
予鈴がなるまで待機させられた。
教師たちがもの珍しそうな顔で私を眺め、
声をかけてくる。
「西島くん、もう水泳はやらないの?」
「どうして急に引退したの?」
「もったいないよなー。金メダル確定って言われてたのに。」
その問いかけに私は愛想笑いをしながら誤魔化す。
この対応にはこの2年間の間でだいぶ慣れた。
どうしてあの日、兄がいなくなったのか
そんなのは私にはわからない。
でも、兄は
『自由がほしかった』んだとおもう。
予鈴が鳴り響く。
教師と共に教室へ向かう。
あぁ。今回もまたこの瞬間がやってくる。
憂鬱でたまらなかった。