第2章 泳ぐのは『好き』ですか?
しばらく歩くと、
父は私の背中を軽く叩いた。
「悪いな。紅葉。これも母さんのためなんだ。」
「ううん。大丈夫。もう慣れたよ。」
私が笑うと、
父は更に申し訳なさそうにした。
「今回の学校は水泳部がないらしいから、さほど注目される事もなかろう。…気をつけるんだよ。紅葉。」
「ん。ありがとう。じゃ!」
私は駅前で父と別れると、
ゆっくりと海沿いにそって歩く。
少しブカブカのズボンが引きずるようで
歩きにくかった。
皆さん、お気づきかもしれないが、
私は西島紅葉と言う名の女だ。
そして楓というのは私の双子の兄の名だ。