第4章 期待の大型新人
私が黙り込んでいると、
凛ちゃんという男はシビレを切らしたように
「っち」と舌打ちをすると私の胸倉を掴んで壁に勢いよく押し付けた。
「…ってぇ」
思わず声をあげる。
「誰だっつってんだよ!?」
「西島楓だよ!!見てわかんねぇのかよ!?」
必死で青くなった顔でそういうと
男は更に顔をゆがめた。
「じゃぁ、今日の泳ぎは何だよ!?ざけてんのかよっ!!??」
ぎゅっと私の胸倉を掴んでいる手に力が入る。
首がしめつけられて苦しくて相手の手をどけようと必死で低抗するにも関わらず、その力には敵わない。
「…っはぁ、うるせぇ…よ…お…まえに…僕の…何が…わかん…だよ…くる…しぃ…」
苦しさから途切れ途切れにそう言うと
男ははっとなったように私の胸倉から手を離した。
開放されて思わず膝から崩れ落ちる。
苦しくて呼吸が上がる。
「…わざと手を抜いてたわけじゃねぇのかよ?」
男はうつむきながらそう尋ねた。
その言葉に答えれず思わず黙り込んだ。
でも、私は静かに頷いた。
「…失望したぜ。西島楓。」
男はそういうとクルっと踵を返して姿を消した。
思わず溜息がどっと出て、
変な汗が吹き出た。
「…やっぱり無理があるなぁ。お兄ちゃんのふりして水泳なんて…」