第4章 期待の大型新人
「西島楓ってあんなもんだったっけ?」
「手ぇ抜いてるんじゃね?遅すぎだろ。」
「大会出る気ないとかぬかしてたらしいしな。」
「期待はずれもいいところだよな。帰ろうぜ。」
続々とギャラリーが帰っていく。
私はただその様子をじっと眺めていた。
きっとこれが兄が見たくなかった景色なのだろう。
「楓。お疲れ様。泳ぎ、すごいよかったよ。」
真琴先輩がプールサイドから私に手を差し出す。
私はニコっと笑うと、真琴先輩の手を握った。
グイっと一気に引き上げられる。
「…っと!!!」
「うわぁ!?」
勢いよく引き寄せられたので
思わず真琴先輩の方へと倒れこむ形になる。
「あ、わ、悪い!思ったより軽かったから…」
真琴先輩は慌てて私を離す。
「いえ、すいません。ありがとうございます。」
「へへー♪楓ちゃんの泳ぎはやっぱりキレイだね!僕、楓ちゃんの泳ぎ大好き!」
渚が私に抱きついてくる。
「渚…。」
「周りのことなんか気にするな。お前らしくあればいい。お前は自由なんだから。」
遙先輩は相変わらずボソっと励ましてくれた。
「遙先輩…。」
竜ヶ崎はじっと私を見つめて居た。
それから鮫塚との練習は終わった。
私はさっとトイレで水着を着替えると、
慌てて更衣室の前に戻り、
みんなの着替えが終わるのを待っていた。