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緋寒桜散り行く日陰。☆Free!

第4章 期待の大型新人


「いちについて…よーい…」


その掛け声にすぐに姿勢を整える。


"ピッ!!!"

高いホイッスルの音を確認するとプールへ飛び込む。



久々に泳ぐプールの感覚は懐かしくて、
心地が良いものだった。


泳ぐのは昔から大好きだった。


唯一、お母さんから褒められる特技だったから。


でも、いつしか、兄が活躍しだすと、
母は私を一切見てくれなくなった。


また、『紅葉すごいね』って褒めて欲しくて、
必死に練習して、ただただタイムにこだわって、
タイムは上がって当たり前で下がると母から落胆され、

いつの間にか泳ぐ事が恐怖になっていた。



でも、今はそんな事は気にしなくていい。


自由に…


泳げるんだ。





ゴールにたどりつき、
水面から顔をあげる。



そこには、
当然のごとく歓声はなく、


ざわざわと騒ぐ声と少し残念そうな顔ばかりが
並んでいた。




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