第4章 期待の大型新人
遙先輩が合図とともに水に飛び込み、
泳ぎ出す。
その泳ぎは思わず見とれてしまうほど
キレイで自由で…
ふっと幼い日の兄を思い出した。
兄の泳ぎはいつだって私の憧れだった。
自由でおおらかで…のびのびとしていて…。
でも、いつからか
タイムにこだわるようになってから
兄の泳ぎはどんどんと
窮屈なものに変わっていった気がした。
だから、遙先輩の泳ぎを見ていると
懐かしいような…ずっと求めていたような
不思議な感覚に陥った。
あっと言う間に遙先輩は泳ぎ終わった。
「次、楓の番だぞ。」
呼ばれてはっとなり、
すぐにスタートブロックへと向かった。
周囲の視線が私に集まる。
思わず緊張から心臓がドキドキとする。
「…練習だ。好きに泳げ。」
遙先輩はボソっとそう言ってくれた。
…好きに…泳ぐ…。