第2章 泳ぐのは『好き』ですか?
教室に入ると一気に視線が私に集まる。
「おい、あいつなんか見た事ねぇか?」
「あ。まじだ!えーっと…」
「あ!!!水泳の西島だよ!」
「まじ!?本物!?すげぇ!?」
教室内が一気に騒がしくなる。
教師が一喝すると途端に静かになるが、
皆、じっと私をめずらしそうに眺める。
「はい!皆さん!もうお気づきの方もいるかもしれませんが、今日からご両親の都合で転校してきました、西島楓くんです!みんな仲良くするよの!じゃ、西島くん。挨拶を。」
教師に促され、
私は一歩前に足を踏み出した。
「西島楓です。宜しくお願いします。」
そう言って頭を下げると拍手が起こる。
それと同時にざわざわとまた教室が騒がしくなる。
「てか、なんでうちの学校なんだ?」
「だよなー。近くに水泳の強豪校あんのにさ。」
「うち水泳部あったっけ?」
やっぱり水泳の話をされているようだった。
水泳部があったらあったで
勧誘が面倒くさいんだが、
なかったらなかったで疑問がられるのが
面倒くさいのだ。
溜息をつき、顔をあげると、
一人の少年と目があった。