第5章 コンパス
大野side
松本くんが俺の首筋に顔を埋めた。
床に二人で座り込みながら、身体を密着させて…
思わず背中に腕を回して抱き寄せた。
ドクドク…と二人の鼓動が重なっている気が、した…
松本くん…いいのか…
俺がこんなことしても嫌じゃないのか?
俺、うぬぼれていいのか…?
俺を…受け止めてくれるのか…?
松本くんの身体を起こし、また見つめ合った。
再び顔を近づけようとしたその時、部屋の呼び鈴が鳴り響いた。
ビクっとして二人とも身体を離した。
「あ…で、出てこいよ?」
「す、すいません…」
真っ赤な顔をしながら立ちあがって、ぱたぱたと玄関の方に走っていった。
俺は床に座り込んだまま、呆然としていた。
なんてことしちまったんだ…!
そして、松本くんはなんであんなこと…
混乱する頭を掻きむしって、俺は唸った。
「ええーっ!」
玄関から松本くんの大きな声が聞こえたから、思わず立ちあがって玄関に向かった。
「どうしたんだ!?」
玄関の叩きに誰か座り込んでた。
「大野さん…」
松本くんが困ったような顔を俺に向ける。
「どうした…」
座り込んでた奴が俺を見た。
二宮くんだった。