第5章 コンパス
大野side
松本くんが俺の誕生日知ってた…!
なんかそれだけでタコ踊りしたいくらい嬉しかった。
美味しいハンバーグと、美味しいシャンパンであっという間に俺は酔った。
いつもならこんだけで酔わないのに…
心地いい酔いが、身体を包んでいた。
「大野さん、もう酔ったんですか?」
「ん…なんか、飯うまいし、酒もうまいし…」
「嬉しい…」
松本くんの頬が、淡赤に染まって…
ぽってりとした唇の赤は鮮やかで…
「ちょっと、トイレ…」
耐え切れなくなってそう言って椅子から立ちあがったら、足が縺れてしまって。
「危ないっ…」
立ちあがった松本くんに抱きつくような格好になってしまった。
ふわっと、松本くんの匂い…
思わず、掴まった手に力が入る。
「大野さん…?」
すぐ傍に…いる…
顔を上げて、松本くんを見つめた。
「あ…え…?大野さん…?」
視線を逸らさず俺を見つめてくる瞳。
まつげ、長いなあ…
もっと、近くで見たい…
逃げるように後ろに下がるから、頭の後ろを手で押さえた。
掴んだ腕を引き寄せて、ゆっくりと顔を近づけて…
キスを、した。