第5章 コンパス
大野side
ご招待に応じて、松本くんの家を尋ねる。
中に入れてもらってソファに座ると、暖かさが染みた。
暫くしてダウンを脱いだら、松本くんが持って行ってハンガーに掛けてくれた。
なんか…奥さんみたい…
そう考えて、1人で真っ赤になった。
「あー、なんか勉強以外で来るの久しぶりだな」
「はい。あ、座っててください。俺、準備しますから」
「いや、なんか手伝う…」
「いいんですって!あ、なんかDVDでも見ててください」
松本くん…俺、今日誕生日なんだ…
言ってないから知らないよね。
でも、こうやって一緒に過ごせるから凄え嬉しい。
DVDを漁って(AVないか確認しちゃった)適当なの選んで、勝手にデッキにセットして見てたら、コーヒーを淹れて持ってきてくれた。
テーブルに置くとき、いつものコロンが香ってきた。
あの日のキス…俺が風邪引いた時、松本くんと偶然したキスをなぜか思い出して…
「うわおっ…」
「えっ…どうかしましたか?」
「きゅ、急に来たからびっくりした」
「ふふ…一応、声掛けましたよ?」
「そ、そうか」
ふんわりと笑って、松本くんはキッチンへ戻っていった。
心臓に悪い…