• テキストサイズ

大野さんと松本くん

第5章 コンパス


大野side

「あのっ26日って空いてますか!?」

一日の業務も終わって帰ろうとしていた19時。
突然、松本くんがデスクの前でそう叫んだ。
フロアにはもう誰も居なくて、がらんとしている。

「あ、ああ…土曜日だろ?空いてるよ?」
「良かった…」
「え?」
「あっ、いえ…その、ご飯どうかなって。よかったら作ります!」
「え…いいの?」
「はいっ、ぜひ!」

帰り、にやにやが止まらなかった。
試験勉強ばっかりしてて、松本くんとはプライベートでも会ってるんだけど、それほど仲良しになったわけではない。
この際だから、友達くらいにはなっておきたい。
それが、一番近くに居られる方法なんだから…

夜空を見上げると、そこには何もない空。
ガスが掛かってて、その向こうにある星空なんて見えない。
俺の心は、ガスみたいなもんで…

やめよう。
俺はこんなおセンチじゃねえんだ。

…なんで、松本くんなんだろう。
なんで松本くんだけが俺をこんな気持ちにさせるんだろう…

「わっかんねえなぁ…」

小石を一つ蹴りあげた。

次の土曜、俺は松本くんの家へ向かった。
ちょっとスキップしてみた。

乙女かっ!俺…
/ 207ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp