第5章 コンパス
大野side
どきっとした。
松本くんの髪を撫でていて、そろそろ遅い時間だったから起こそうと手を離したら、きゅっと手を握られて。
まだ、撫でて欲しいのかな…
そっと髪に触れると、ふふっと笑って…
そのままずっと髪を撫でてた。
なんか、しあわせで…
起こしたくなくて、松本くんをおんぶしてタクシーに乗り込んだ。
途中で起きたけど、強引にまた寝かせて。
松本くんの家に着いたら起こして、そのままタクシーに乗って帰った。
帰り際タクシーに小さく手を振る松本くんはかわいかった。
もっと、一緒にいたいな…
もっと、傍に…
そうは言っても男同士。
恋人になれるわけじゃない。
だったら、上司としてやれることはやってやろう。
そう思った俺は、次の日から松本くんの昇格試験の勉強に付き合うことにした。
「松本くん。今日家に行ってもいいか?」
「えっ…えと…」
「昇格試験の勉強、見てやるよ」
「ほ、本当ですか!?」
嬉しそうな顔をする松本くんを見てると、こっちまで嬉しくなってくる。
晩飯を作るというのをなんとか押さえて、外で軽く済ませて松本くんの家に向かった。
勉強の時間が惜しかったからね。