第5章 コンパス
大野side
俺が嘘ついたのがわかったのか、松本くんはまるごとな姿の鶏を見事な手つきで捌いて取り分けてくれた。
形がなくなったら平気だから、その後は美味しく頂いた。
酒を飲みながら、いろんな話をする。
程よく酔っ払ってきたら、松本くんがふにゃふにゃして可愛くなってきた。
やばい…
座布団を少しずらして、前かがみになる。
こんなところでもっこりしてる場合じゃない。
半個室の出口はドアがついてなくて、廊下を店員が時々通って行く。
こんなところで邪な気持ちになっている自分が情けない…
「ちょっと、トイレ行ってくる…」
そう言って部屋を出た。
落ち着いてから部屋に戻ったら、松本くんは床に寝転がってて。
「ど、どうした!?気分悪いのか?」
慌てて駆け寄ったら、ふんわりと俺を見上げてふふっと笑った。
どうやら寝ぼけているようだ。
試験勉強であんまり寝てないとさっき言ってたから…
眠かったのかな…
また目を閉じてしまったから、膝枕をした。
「お疲れ…松本くん…」
そのままの姿勢で俺は、マッコリをちびちび飲んだ。
膝が熱い。
「あんま無理すんなよ…」
そっと髪の毛に触れて、撫でた。