第5章 コンパス
松本side
案内された半個室のテーブルには
寒くなってきた今の時期、体があたたまりそうなおいしそうな料理が並んだ
「いただきます」
お酒を飲みながら食べ進めるけど…
「大野さん…もしかして…苦手ですか?」
俺寄りに置かれた参鶏湯に大野さんは一向に手をつけない
「い、いやっ、そんなことないぞ!」
そう言って大きな鶏に手をつける顔は引きつっていた
「あの…俺が食べたいって言ったから…?」
申し訳ないような嬉しいような…複雑な気分で聞くと、否定する大野さんの鼻がピクピクと動いた
誤魔化したりするとき…鼻、動くのかな
また新しい大野さんを知れたようで嬉しかった
「試験勉強は順調か?」
「たぶん…なんとかなると思います」
腹も満たされて酒を飲みながら、いろんな話をする
最近仕事と試験のことしかほとんど考えることがなかったから、すごくこの時間が楽しくて
少しでも長く続くように酒をゆっくりと飲んだ