第1章 ホチキス
松本side
次の日も大野さんは相変わらずだった
朝礼で緩い挨拶をして
時折あくびをする
鼻をほじったりもしてる
見なきゃいいのかもしれないけど
目の前のデスクにいるから視界に入ってくる
そして昨日送ったメールにはまだ返信がない
耐えきれずに
「大野さん」
デスクまで行って声をかけると
「ん?」
チラリと俺に視線がきた
「昨日の件ですが、表参道・代官山で行くことにしました」
改めて伝えると
「うん、メール読んだよ」
サラリとそんなことを言ってくる
「返信がないから、読まれてないのかと思いました」
若干言葉が嫌味ぽくなってしまったのは
仕方ないと思いたい
「訂正点も何もなかったからね」
「それで、新宿をやめた理由としては、やはりいろいろ見た結果、表参道や代官山に比べてターゲットとなりそうな若年層が少ないと思いまして…」
ため息を飲み込んで
リサーチ結果を話しているのに
目の前の大野さんからは聞いてる感じが伺えない
この人は報連相を知らないのか?
2日目でやっぱり俺とは合わないと確信した