第1章 ホチキス
大野side
あのおっかないのが帰ってくる前に帰ろっと…
外回りに出た松本くんは他も回ってるらしく、定時近くなっても帰ってこない。
「おーい。二宮くん」
「なんですか?大野さん」
「あのさー」
「はい、きっかりですね?」
「わかってる~」
二宮くんは俺の補佐をしてくれて長い。
秘書みたいなことをしてくれてる。
だから話が早い。
「後、よろしくねー」
「はいはい」
17時きっかりになると、社内には音楽が流れる。
外資系だから、定時には帰れとお達しが出てる。
だがここは日本だ。
残業戦隊ザンギョマンがわんさかいる。
だが、俺の課では残業させないようにしている。
はよ帰って奥さんの乳でも揉んでいやがれ。
あ、女子は旦那のちん…
やめとこ。
課長の俺が定時きっかりで帰るから、部下たちは楽だろう。
ふむふむと我ながらいい言い訳だと思いながら席を立つ。
音楽を背に聞きながら、俺はエレベータに乗り込んだ。
スーツの懐のスマホが震える。
「おーの、すぴーきん?」
めんどくせえ…本社からだよ…
通話しているとロビーを横切る松本くんが見えた。
「程々にしろよー…あ、のーのー!」
電話中だった…