第1章 ホチキス
松本side
「なんなんだよっ…」
会社を出て
新宿に向かう車の中
思わず一人呟いた
ちゃんと見てくれてる…と思ったら
やっぱりテキトーで…
「はぁー……」
朝から溜まりに溜まったため息を
一人きりの車内で思いっきり吐き出したら
少しスッキリした気がした
そのまま他の地域も見てみたくて
いろいろ回っていたら
帰社は定時を少し越えていた
「ただいま戻りました」
課内には残業している人がチラホラといる
「おかえりなさい」
ところどころからあがる声を聞きながら
報告しておこうと大野さんを探すけど…いない
「大野さんって帰られました?」
だってまだ定時からほんの少し過ぎただけだし、まさか…と思いながら二宮係長に声をかけると
「さっき帰られましたよ」
どこかで予想はしていた答えが返ってきた
定時過ぎてるわけだから文句は言えない
仕方なく
当初の企画通り表参道・代官山で進める報告を
社内メールにして大野さんに送って
俺も会社を出た