第1章 ホチキス
大野side
「ちゃんと確認お願いします」
ちょとキレたように言われてびびった。
ちゃんと見たんだけどなぁ…
「俺はいいと思ったからいいって言ったんだけど?」
「どこがいいと思ったんですか?僕は意見が聞きたいと思ったから…」
「この商材を撒く地域がいいと思った。表参道・代官山なら若い女の子が多いから、まずサンプルは貰ってくれる。メーカーさんが宣伝費を使わない方針だから口コミが命綱だ。この地域にはセレクトショップが多いから、口コミが広がれば営業効果も上がる。だから…」
くどくど言ってやったら、松本くんは放心している。
「…あんだ?聞いてる?」
「あっ…はい…」
「で、だからさ…いいと思ったんだけど…?」
「あ…じゃあ、この地域を新宿にしてみたら…?」
「しらね。リサーチしてこいよ」
「はっ?」
「ほら行ってこい」
もたもたしてるから手をヒラヒラ振ったら、松本くんはデスクに引き上げた。
半ギレの横顔を眺めながら、なかなか面倒なやつが入ってきたなと思った…
俺、あいつに取り殺されないかな…
ぶるっと身体を震わすと、松本くんは外回りにでかけた。
「くわばらくわばら」