第3章 ホワイトボード
松本side
大野さんがうまいと笑ってくれて
ちょっと気まずかった沈黙がどこかにいった
「お口にあってよかったです」
「松本くんはいつも自炊してるのか?」
「時間があるときはしてますよ、料理は元々好きなんです」
「昔から料理してるのか?」
「大学で一人暮らし始めてからですね」
些細なことかもしれないけど
大野さんが俺に興味を持ってくれるのが嬉しかった
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
キレイに空いた皿を受け取って
自分のと重ねて持ったまま手が止まってしまう
これで…ここに大野さんがいる予定は終わってしまった
まだ一緒にいたい
「松本くん?どうかしたか?」
皿を持ったまま考えていたからか
大野さんに声をかけられてハッとなった
「あ、いえ…」
曖昧に返事をしたまま皿をキッチンに下げて
…あ、これだ
見つけたものをカップに注いで持っていく
「頂き物なんですけど…コーヒー飲めますか?」
たった少しの時間しか伸ばせないけど
それでもキッチンで見つけたコーヒーは宝物を見つけたような気分で
大野さんの前にコトリとカップを置いた