第2章 温度計
松本side
「うん…うん…」
時折頷いたりしながら
大野さんの指が俺のタブレットの上を滑る
俺はそんな大野さんに視線を奪われていた
いつもは仕事してる姿は正面から
でも今は綺麗な横顔が見える…
頷いたりする度に小さく動く首筋…
たまに唇を舐める赤い舌…
全部に心臓が騒がしく動いて…
だから
「松本くん…聞こえてるか?」
ずっと呼ばれていたことに
少し大きな声で呼ばれるまで気づかなかった
その声に肩がビクッとなる
「あっ…すいません…なんでしたっけ…」
慌てて取り繕って言葉を返すけど
訝しそうに大野さんは俺を見て
「やっぱり具合が悪いんじゃないのか…」
そう言って手を伸ばしてきた
それから逃れる前にピトッと少し熱い手が
俺の額に当てられる
その感触に一気に体が熱くなって
後ずさるように立ち上がる
「だ、大丈夫ですっ…」
「でも顔が真っ赤だぞ…」
尚も見つめてくる視線は俺の体をどんどん熱くして…
だめだ…このままいたら…俺…
自分がコントロールできなくなりそうで
「すいませんっ、やっぱり帰ります!」
それだけ言って慌てて家を飛び出した