第2章 温度計
大野side
カチャカチャ台所から聞こえていた音が途切れた。
もう茶碗洗い終わっちまったのかな…
こんなに世話焼いてくれてるけど、もう帰さないと…
風邪感染ったら後悔してもしきれない。
寂しいけど…
「松本くん…?」
ふと見たらゴミ片手に佇んでる松本くんがいた。
「大丈夫か?」
ビクっと肩を震わせ、こちらを見た。
「もしかして…具合悪いのか?」
「いっ…いえ、違います!」
慌てたようにゴミを持ったまま胸の前で手を振る。
「なんかっすることないですか!?」
「えっ?」
「俺…家帰ってもやることないんです。だから…」
なんか…帰りたくない理由があるのかな…
必死な顔をみてたら、無碍にもできなくて。
「じゃあ…ラッキーセブン社の見積もり出せ」
モードを切り替えて、松本のタブレットを借りて今日の仕事をつぶさに点検した。
「あ…あの、ベッドに入ってください…」
しょうがないからタブレットを持ったままベッドに入った。
布団を足に掛けてくれて、松本はじっと俺を見た。
そんな目で見るなよ…おかしくなんだろうが…
スワイプする指が震えた。
俺…なんかおかしい…