第2章 温度計
松本side
「水分摂ってますか?」
ベッド脇に座って聞くと
「さっきまで寝てた…」
そう言って首を振る
「雑炊、食えそうですか?」
「たぶん…」
寝てたとは言っても
まだ熱が下がりきってないからか
大野さんの瞳が潤んでいて直視できない
体温計の場所を聞いて棚から出して手渡した
「飯作ってくるんで、熱測っててください」
そう言って寝室を出てキッチンを借りた
そこでようやくふぅっと一息つくと
今こうしていれることの幸せとドキドキが押し寄せてくる
ほぼ押し掛けだけど家にいれてくれて
看病をさせてくれることが嬉しかった
だけど…
抱き上げた体も
ベッドの上で俺を見る潤む瞳も
今の俺にはキツいものもある…
だめだ、俺は看病に来たんだ…
そう自分に言い聞かせて
小さな土鍋に雑炊を炊いた
「大野さん…できましたよ…」
お盆に土鍋と器を乗せて寝室に入ると
布団に包まれた大野さんは小さな寝息をたてていた
ベッドサイドのテーブルにお盆を一旦置いて
その寝顔を眺める
思わず手が伸びて
サラッと前髪に触れた瞬間
パチ…と開いた瞳と目が合って
慌てて手を離した