第2章 温度計
大野side
お…おっかねえ…
「なにか飲んだりできそうですか?」
ベッドの横にしゃがみこんで俺を覗きこむ松本くんは、俺の額に手を当てた。
「あ~…いや、あのな…櫻井くんとは別に…」
「は?」
シャープな返答に俺は黙るしかなかった。
「なにか飲み物…」
「あ…いや、あのな?今日ドクター休みみたいなんだ…」
「えっ」
松本くんは立ちあがってカレンダーを見た。
「ああ…総務なんにも言ってなかったのに…」
ちょっと苛ついた様子を見せる松本くん。
なんで…?俺のために…?
「いや、だからさ業務に戻るから…」
「だめですっ!」
なんでこうなった。
俺は今、見知らぬ人の車に乗せられ医者にドナドナされている。
あの後、松本くんは俺を5課に連れて行って、二宮くんに業務の引き継ぎをした。
その後、櫻井くんの1課に連れて行かれて課長会議のレジュメを渡した。
そしてなぜか1課の相葉主任とやらに俺をおんぶさせた。
そして今、運転しているのは相葉くんで…
この車は相葉くんの自家用車で…
「悪いねえ…相葉くん…」
「いえ!お気になさらず」
さすが1課の営業戦士…さわやか…