第2章 温度計
松本side
「綺麗だなあ…」
大野さんが俺を見てそう言った
俺にじゃないのかもしれないけど
目の前の熱で汗ばんだ首筋のせいもあって
心臓がうるさくて
「は…?」
そう言ったまま大野さんから視線が外せなかった
体温計の音でようやくハッとして
脇から抜き取った体温計を大野さんの手から取り上げた
37.8度…
「少し休んでいてください」
椅子から立たせてベッドまで大野さんを引っ張る
「大丈夫だから…」
まだそんなことを言うから無理矢理ベッドに寝かせた
「だめですってば」
言いながら大野さんを見下ろして心臓が大きく跳ねた
白いベッドに寝ている大野さん…
その光景から逃れるように離れて
医務室の水道でタオルを濡らした
それを大野さんの額に乗せると
気持ちよさそうな目をした
「ドクターにも課にも伝えておきますから、少し寝ていてください」
伝えながら時計を見るともう朝礼が始まる時間
何か言いたげだったけど
聞いてる時間はなくてそのまま医務室を後にした