第7章 マスキングテープ
大野side
潤が話を聞いてくれない…
ゆっくり時間を取ろうにも年末進行が予定より進んでいなくて、徹夜寸前で…帰りはいつも終電。
商社の年末なんてこんなもんだ…
しかも5課の扱ってる商品は、年末年始に使うものばかりだし…
いっつも誰もいないオフィスでてっぺんを迎えそうになる。
慌てて終電に間に合うように会社を走って出る日々が続いていた。
そんな週末、外回りから戻ったら岡本部長がトイレに入るのが見えた。
おかしい。なんで5課の横のトイレに?
そう思った俺は嫌な予感がしてそっとトイレのドアを開けた。
信じられない光景があった。
岡本部長と潤がキスしていた。
重なる顔…岡本部長の手が潤の顔を包んでいる。
見ていられなくて俺はすぐにその場を離れた。
腹の底からなにか突き上げてくる。
こんな感情初めてだった。
人に怒ることもなければ、固執することもなかった俺が…
嫉妬してる。
デスクに戻ってもなにも手に付かない。
定時の音楽が鳴っても、19時の飯休憩の音楽が鳴っても。
一向に収まらない。
ついにフロアに誰も居なくなっても収まらなかった。
「大野さん…?」
見上げたら、そこに潤が居た。