第7章 マスキングテープ
松本side
昨日はあれからも智は俺に話しかけて来たけど
忙しいのと消えないヤキモチとで話したくなくて
業務のこと以外話さなかった
そして今日も朝イチで
櫻井課長が智の肩を組むようにしながら挨拶してるのを見て、気分が重いままデスクに向かっていた
「はぁ…」
だめだ、顔洗って気分切り替えてこよ…
そう思ってトイレでバシャっと顔に冷水をかけるとちょっとだけスッキリした
「戻るか……って、わ…お疲れ様です」
顔をあげると鏡に岡本部長がいてびっくりした
「お疲れ様、浮かない顔して、悩み事?」
「あ…いえ、悩みとかじゃ…」
恋人へのヤキモチだなんてさすがに言えない
「そう?顔色も良くないよ…疲れてるんじゃない?」
そう言った岡本部長の手が伸びてきて
昨夜あまり寝れなくて薄らとできたクマをなぞるように目元に触れられた
途端に背筋がぞわっとする
思わず身を捩って逃れて
「心配かけてすみません、ほんと…大丈夫、ですから…」
後ずさるようにオフィスに戻った