第7章 マスキングテープ
大野side
「まあ…あの人がゲイっていうのは有名な話だよね…」
「えっ…そうなのか!?」
「管理職で知らないの大野くらいじゃないの?」
俺はあまり社内の噂というのは聞かない。
聞いたってしょーもないことが多いからだ。
「で?恋人になったんだろ?」
「え?あ?うん…」
「やっぱりね。わかりやすいよお前」
「うるせえな…」
気がついたらキスでもしそうなくらい近くに櫻井の顔があった。
「なっ…なにすんだ!」
「ちっ…」
舌打ちをしながら爽やかな笑顔で櫻井は去っていった。
「まてよ…まだ話…」
「俺も詳しくは知らないんだ。ま、気をつけろよ」
ヒラヒラ手を振って櫻井は戻っていった。
なんだよ…ちくしょう。
課に戻る廊下を歩いていたら、岡本部長と潤が立ち話しているのが見えた。
慌てて潤に声を掛けて課に戻らせた。
岡本部長の視線を背中に感じたから、潤の腰に手を回して引き寄せた。
「えっ…大野課長!?」
「いいから…」
「だっ…だめだって…」
解こうとした手をぎゅっと握った。
「じっとして…」
振り返ると、岡本部長はじっとこちらを見ていた。
やっぱ、ロックオンされてる…?