第7章 マスキングテープ
松本side
定時を少し過ぎたタイミングで
このあとの残業に向けてコーヒーを買いに行こうとオフィスを出ると
「松本くん、お疲れ様」
岡本部長が前から歩いてきた
「お疲れ様です」
すれ違おうとしたのに
岡本部長が立ち止まるから
俺も立ち止まらざるを得なかった
早く仕事終わらせたいんだけどな…
なんだかよくわからないけど
智に部長と2人きりになるなって言われたし…
それにやっぱりこの人の視線…苦手だな…
そんなことを考えつつ
岡本部長の話を聞いていると
「松本くん、今度食事でもどう?」
突然誘われて
「えっ?」
視線を合わせてしまった
強い視線で捕われそうになる
「そうですね…、いつか、機会があれば是非…」
智の言葉が気になっていたけど
そう返事するしかなくて
そう言ってその場を離れようとしたとき
「松本くん」
今度は智の声が背後から聞こえた
「お疲れ様です、課長」
部長の前だからしっかり挨拶をする
智も部長にお疲れ様ですと言いながら
こっちに歩いてくるけど
その視線がいつもよりキツい気がした