第7章 マスキングテープ
大野side
いい人か…
櫻井くんが言ってたことがどうも引っかかる。
今日は何事もなかったけど、この先なにがあるかわからない。
「松本くん、ちょっと…」
そう言って潤をミーティングルームに呼び出した。
「なんでしょう」
一応会社だから敬語を使っている。
よそよそしく感じながらも、話を切り出した。
「岡本部長な、どんな話してた?」
「え…世間話とか…仕事のことも。あっちの本社の話を特に」
「そっか…あんまりあの人とふたりきりになるなよ」
「え?どういう意味…?」
「いや…なんでもない…」
取り越し苦労だといいけど…
それに嫉妬がないわけじゃない。
あんなに仕事のできるエリートが潤のこと口説いたら…
自信がなかった。
そわそわして落ち着かないから、定時の音楽を聞いて1課に向かった。
櫻井くんはまだデスクにいた。
「櫻井くん、ちょっと…」
「なんだよ。珍しいな…」
二人で自販機に行って、コーヒーを奢った。
1課の近くの自販機は5課の自販機より種類があった。
差別だ…
「で?聞きたいのは岡本さんのこと?」
「ぐ…なんでわかる」
「大野の考えてることはだいたい分かるよ」