第7章 マスキングテープ
松本side
智に部長が呼んでると言われて、部長室のドアをノックする
デスクを離れるときに「気をつけろよ」と耳元で言われたけど…なんだろう、と思っていると、中から声が聞こえてきた
「失礼いたします、お呼びでしょうか」
今まで主任だったから部長とかかわる機会はほぼなかったし、今回は日本人初の営業部長らしいし…
緊張しながら中に入った
「松本くん、待ってたよ」
目力のある、キレイな部長はそう言って俺に椅子を勧めてくれた
向かい合って座ると
「はじめまして。岡本健一です」
言いながら片手を差し出された
「松本潤、です」
同じように手を出すとぎゅっと握られる
熱い手だった
俺の大学の先輩だという岡本部長とは、時折仕事の話も混ぜながら世間話のようなものをした
仕事の話は刺激にもなって、いいことも聞けたけど、ずっとまっすぐに見てくる視線が、なんとなく居心地悪かった
デスクに戻ると
「どうだった?」
智が向かいのデスクから聞いてくる
上司のことを悪く言うわけにもいかないし、仕事に関してはすごい人だと思ったから
「いい人でしたよ」
無難に返しておいた