第7章 マスキングテープ
大野side
12月に入ると年末進行。
暮れの挨拶回りに、課長としての決済の山。
会議とか会議とか。
目の回るような忙しさでも、潤の存在が俺を奮い立たせた。
これが終われば休暇だ。
外資だから休暇だけは長い。
本当は潤と海外にでも行きたかったけど、付き合い始めたころから予約となると厳しかった…
幸いお互いの実家は東京だから帰省もないし、二人でゆっくりできるだろう。
近場で旅行とかもいいな…箱根とか…
「ちょっと!大野さん!」
「んああ!」
「聞いてるんですか!?」
二宮くんが鬼の形相で俺の耳を捻り上げた。
デスクから釣り雑誌がバサリと落ちた。
「もうっ…忙しい時にぼーっとしないでくださいよっ!」
…こんにゃろ…
ぐいっと二宮くんの腕を掴んで、耳元に囁きかけた。
「相葉くんと上手くいってる?」
「なっ…」
真っ赤になって二宮くんは黙った。
よしよし。
「あー、メールで貰った決済でしょ?今するから待ってて」
そういうとすごすごと引き上げていった。
ふと潤を見ると、とても冷たい目でこちらを見ていた。
「へ?」
ぷいっとあっちを向いて、二度とこちらを見なかった。
誤解だって…