第7章 マスキングテープ
松本side
12月下旬
年末に入って5課の係長として忙しい日々を送ってきた
基本残業はしない主義の会社だし
残業はしない主義の課長の智だけど
さすがにノー残業なんて無理な毎日で…
だから最近は智ともマトモに会えていない
いや、会社で会えてるけど…
それは上司と部下としてであって…
「はぁ…」
定時が迫ってるのに
まだだいぶ残っている仕事に思わずため息が出た
仕事が嫌なわけじゃないし
1課にいたときは残業だって頻繁にしてた
でもさすがにこう毎日だと…
「よし…っ」
でもそんなこと言ってられないから
小さく気合いをいれて飲み物でも買ってこようと立ち上がった
ふと前を見ると智と視線が合った
「自販機行きますけど、何か飲みますか?」
「あー…じゃあ、コーヒー頼む」
「わかりました」
自販機でブラックコーヒーを買って来て
智に渡すと、手が触れて…
一瞬だけど、ぎゅっと握られた
目を合わせてふふっと笑い合う
少しやる気が出てきた…頑張ろう…
コーヒーを1口飲んでパソコンと向き合った