第1章 ホチキス
松本side
システムの設定ミス…
それでも俺がちゃんと入力してれば
こんなことにはならなかった
頼りにならない課長だとか思って
あんな態度を取ってきた自分も許せなかった
だけど過ぎたことはどうにもならない
そんなことはわかってる
でも込み上げる涙が堪えられなかった
不意に肩を叩かれて
顔をあげると大野さんがいた
こんなとこを見られた恥ずかしさよりも
偶然でもなんでも
ココに来てくれたことが嬉しくて…
「大野さん…」
涙を流したまま名前を呼ぶと
無言で目尻を指先で拭ってくれた
「っ…すいませ…」
その優しさにまた涙がポロポロと零れる
その俺の手に
ポケットから出したハンカチを握らせてくれた
「落ち着いたら戻ってこい」
それだけ言って大野さんはトイレを出て行った
ハンカチからは…
大野さんのにおいがする…
トクトク…と鼓動が早くなる
ハンカチをぎゅっと握り締めて
このミスは絶対取り返す
そしてあの人の隣に立ちたい…
そう心に誓った