第1章 ホチキス
松本side
目の前で大野さんと担当の時多さんが話してるのを
ただ見つめるしかできない
「それではその方向で進めさせて頂きます…この度は大変申し訳ございませんでした」
「いいですよ、もう…こちらこそわざわざありがとうございました」
頭を下げあって握手する二人の隣で
「申し訳ございませんでした…」
深く頭を下げることしかできなかった
社に戻る車内で
「すいませんでした…」
大野さんの方を向いて頭を下げる
でも
「とりあえず早く戻ろう」
反応はいつもと同じで…
「はい…」
小さく返事をして車を発進させた
ミスをしたのは俺だ
だから…こんなこと想っている場合じゃないのはわかってる
だけど
いつもはあんなにも適当なのに
立ち尽くす俺にすぐに対応してくれて
最後には取引先をあんなにも笑顔にしていた
そんな大野さんがどうしようもなく
かっこよく…素敵に思えて…尊敬できる課長で…
大野さんは上司で…男で…それなのに
小さく高鳴る胸の音を
自分ではどうすることもできなかった