第1章 ホチキス
大野side
「とりあえず、電話を一旦切れ。すぐにお伺いしますと言うんだ」
勝手に口が動いた。
パソコンで松本くんが持っているクライアントを確認した。
「どこだ?」
電話を切った松本くんは青い顔をして動かない。
「松本!」
びくりと身体を震わせこちらを見た。
「ラッキーセブン社です…」
すぐにラッキーセブン社のプロジェクトノートを確認する。
誤発注か…
あれ?俺、決済してないぞ?
なんでこんなことになってんだ?
パソコンを持って、スーツのジャケットを掴んだ。
「松本くん、いくぞ」
松本くんに社用車を運転させて、ラッキーセブン社に向かった。
ミーティングルームに通される。
担当者が入ってくると俺と松本くんは頭を下げた。
「…お座りください」
担当の冷たい声。
「お久しぶりです。時多さん」
「あれ…大野さん!」
「すいません。ご無沙汰してて…」
ここは平だった時に俺が開拓したクライアントだ。
俺は今回のことを謝り、すぐに対応策を提示した。
「実は今回、誤発注した分を生かせる方法がありまして…」
俺は商売の話にシフトチェンジした。
時多さんは身を乗り出してきた。